法学部への進学を考える方へ

 はじめまして。私は都内大学の法学部に在籍している三年生です。自分の経験が役に立つかと思い、この記事を書いています。なお、この記事は、法学部でも特に法律学科、つまり法曹になることを考えている人向けに書かれています。政治学科への進学を考えている人にはあまり参考にならないかもしれません。

 

1. 法曹になるためのルート

 まずは法曹になるためのルートをご紹介します。法曹になるためには「司法試験に合格すること」が必要です。しかし、司法試験は誰しもに受験資格が与えられるわけではありません。受験資格を得るには、次の二つのルートがあります。

 第一に、法科大学院を卒業するルート。法科大学院を卒業すると司法試験の受験資格を得られます。比較的簡単な方法ですが、お金と時間がかかります。

 第二に、予備試験に合格するルート。予備試験に合格すると司法試験の受験資格を得られます。予備試験は誰でも受けられますが、合格難易度は司法試験よりも高く設定されていて、合格することはかなり難しい試験です。短答、論文、口述の三つのテストからなり、毎年五月頃に実施されます。大学一年生から勉強を始めて、大二で短答に合格、大三で予備試験合格、大四で司法試験合格というのがモデルケースになっていますす。学部生のうちに司法試験に合格できる可能性がありますが、予備校の費用もかかるし、なによりその難易度的にモデルケースを歩むことはとても難しい。

 これら二つのルートは一長一短です。法曹志望でやる気のある学生で、入学と同時に予備校に通いだしても、学生のうちに司法試験合格することはおろか、予備試験に合格するのもかなり難しい。法曹志望のほとんどが、初めは予備試験に挑戦して、結局は法科大学院に進学します。

※ちなみに、大学によっては早期卒業という制度があって、規定の成績を収めていれば学部を三年で卒業して法科大学院に進学することも可能です。

 

◯司法試験のための予備校「伊藤塾

 前述の通り、法曹志望でやる気のある学生は、入学と同時に予備校に通いだします。その中で多くの人が選ぶのが「伊藤塾」です。学費は100万円と高額ですが、合格実績や教材の質は間違いありません。しかし、それでも難しい。大学に入るだけの学力を持った優秀な学生と、よく作り込まれた教材、その二つがあってもなお合格率が低いのが予備試験です。そのくらい難しいことを理解しておきましょう。

 しかし、死ぬほど勉強する崇高な精神があれば話は別です。法学部に所属しておらずとも、必死に伊藤塾の勉強をしていれば予備試験合格は十分に可能です。経済学部所属なのに伊藤塾に通って法曹になった人を聞いたことがあります。

 

2. 法律学科のカリキュラム

 法曹への道が険しいことを知ってもらったところで、法律学科のカリキュラムをご紹介します。そもそも法学部には、もちろん法曹志望も多いですが、一般就職する人もたくさんいます。そのため、ひたすら法律を勉強させられるわけではなく、ある程度自由に単位を選ぶことができます。

 いわゆる法律の勉強が必修となるのは二年生までです。二年間かけて憲・民・刑の主要科目を勉強します。三年以降は自由に選択ができ、法曹志望は法律科目を極めたり、一般就職組は国際法や経済法をやったり、あるいは文学部や経済学部の単位をとることもできます。大学生活としても学校で忙しいのは二年生までで、三年以降は学校以外のことが忙しくなります。

 

3. 入学前と入学後、私の法律科目へのイメージの変化

 そもそも僕が法学部を志望したのは、法曹になって正義の味方になるという夢があったからでした。また、法律の当てはめゲーム的な要素に興味がありました。ここでは、憲・民・刑に対するイメージの変化、そして法曹という職業についての認識の変化をお伝えします。

 まず憲法は、僕は今でも大好きです。なぜ基本的人権は守られるべきなのか、新しい人権とはどこまで憲法で保障されるか、公務員の表現の自由は認められるかなど、新書やニュースに出てくるようなテーマについて考えます。倫理や西洋思想、哲学が好きな人にはたまらない科目だと思います。

 つぎに刑法は、システマチックに整理されていて数学好きならハマると思います。ある犯罪が成立したというためには、その行為が複数の条件をクリアしていなくてはなりません。複数の条件のことを刑法学の用語で「構成要件」といい、その該当性を検討していくわけです。構成要件はこれまでの判例や学説で区分され整理されてきており、基本的には当てはめゲームをすればアウトかセーフか判別できます。窃盗と強盗の違い、単独犯と共犯の違い、未遂犯と既遂犯の違いといったものをそれぞれ丁寧に勉強します。とにかく整理されていて、勉強していて面白いです。

 最後に民法。これは魔の科目であり、「眠法」であり、とにかく細かくてつまらない科目です。人はいつから「人」なのか。受精したとき?エコーに写ったとき?お母さんの身体から頭が出てきたとき?全身が出てきたとき?知らんがな、どうでもいいがな。とにかく些末なことまで学説やらの対立があり、受精したとき説と頭が出てきたとき説とを覚えなくてはならない。少し大げさですが、一年次の民法総論はとにかくつまらない。僕は民法で挫折して、法曹への道を断念しました。

 私の法曹へのイメージ。法曹は確かに一生を捧げるに値する仕事だと思ったけど、そのために民法の些末なことを覚える気にはなれなかった。勉強していて腹がたった。そして、自分が法曹に向いていないと思った。確かに法曹はカッコいいし、意義ある職業だと思うけど、その思いも褪せた。これから法曹を目指す人に向けて言いたいのは、生半可な気持ちでは到底法曹にはなれないということです。ただ、目指す価値はあると思います。法曹への道をもがきながらも歩んでる友だちは今でもカッコいいです。そして、法曹を捨ててまで歩むべき道は、なかなか見つからないということも付言しておきます。

 

4. 最後に

 法曹志望の方に向けて、その難しさを長々とお伝えしてきました。法曹になるのは難しい、でも目指す価値はあるというのが私の意見です。一人の脱落者としてこれをお伝えしたいと思います。

 一方で、法学部での勉強はたしかに社会でも役に立つように思います。そもそも大学の勉強は、そのままの形で社会の役に立つかという基準で考えてはいけないものだと思います。最初は無理にでも、自力で法曹なるんだくらいの気概を持って勉強しておくのがいいと思います。そして、勉強する習慣を大事にしましょう。とにかく皆さんの良い大学生活を祈っています。何か質問があれば、コメント欄にお願い致します。