メガ生保の役割は拡大する?

 国内生保事業は、本当にオワコンなのでしょうか?意外とやりようがあるのではないか、と最近は思っています。

 

 確かに、生保は日本人の富裕化に伴う顧客ボリュームの拡大により、今の地位を確立してきました。「生保レディ」という営業職員チャネルを活かして、ただひたすらに契約件数を伸ばしてきました。(よく考えれば、日本人が有事に備えて貯金を増やすという性質は、もちろん戦前戦中の施策も重要だろうが、生保のマーケティングに寄るところもあるのではないか?)とにかく、生保はボリュームの拡大で頑張ってきました。

 ところが、日本では少子高齢化に伴う人口減少が発生しており、それによって生保も危ないのではないかという見方が広まっています。これは本当なのか、検証したいと思います。

 

 生保各社は、生命保険いわゆる第一分野の保険を諦め、健康増進型保険や医療保険など、いわゆる第三分野の保険の販売に注力しています。これにより、生命保険の減収分を稼ごうというわけです。また、これまで営業職員の対面営業が基本だったところを、銀行窓口や保険代理店でも販売するようにすることで、お客さんの側から保険を買いに来て貰うようなチャネルを整備しました。加えて、外貨建ての保険など市況に応じて返戻金額が増減するような保険商品を販売したり、投資信託を扱うなどして、昨今の資産運用ブームにも対応しています。

 順調にビジネスモデルの変革に成功しているようには見えますが、一方で昨今のFinTech、InsurTechプレイヤーの増加により、メガ生保以外のプレイヤーが積極的に参入しています。また、銀行窓販が増えているように、銀行や信託など既存のプレイヤーのいる領域に飛び込んだことで、新たな戦いを余儀なくされています。その中で、メガ生保は今後も発展を続けることができるのでしょうか?

 

 メガ生保の優位性、これを再認識するべきです。優位性とは、営業職員チャネルと、保険メーカーとして蓄積された知見とノウハウのふたつです。そして、この優位性を活かして、生保各社は既存の保険商品の枠を超え、人々にとって「欲しい」と思われる存在に変わっていかねばなりませんし、そうするべきです。

 

 私は、昨今の日本の社会課題解決において、メガ生保は主要なプレイヤーになれると考えています。そして、社会課題解決に取組むことが、生保各社の売上を伸ばすことにも繋がると確信しています。

 

 社会課題とはなにか。超高齢化社会へ邁進する日本では、これまで生活を支えてきたあらゆるものが瓦解していく。第一に、税金制度・公的保険制度が崩れる。高齢者は2割負担とか言っていたが、この継続はどんどん難しくなっていく。老後2000万円問題など、自分の身は自分で守ることが求められる時代になってしまっている。第二に、地域の繋がりの希薄化。昔の農村社会は地域住民が協力しなければ生きていけなかったからこそ、地域コミュニティが維持されていた。しかし今では、人間は一人でも生きていけるようになってしまった。これにより地域の繋がりは希薄化し、いざというときに頼れる人間がいない。老老介護の無理心中や孤独死など、痛ましい死が今後増えていくだろう。

 これに対して生命保険会社は有効な手立てを打つことができる。そしてそれが、生命保険会社に対するファンを増やし、売上を伸ばすことにも繋がる

 ここで重要となるのが、営業職員チャネルと保険メーカーという二つの強みである。全国に広がる支店網、営業職員チャネル網を用いて、地域コミュニティを活性化することができる。また、健康診断が安くなる保険や、自分の体質をモニタリングして貰えるような、「欲しい!」と思えて、健康を維持してくれるような保険商品を開発することで、日本の医療費負担を減らすことができる。