生命保険を考える

 生命保険とは、契約者が死んだとき、残された人に保険金が支払われるという金融商品だ。日本では高度経済成長期など、戦後の焼け野原から日本が豊かな国になるに従って契約者数や生命保険業界も伸びていった。つまり生命保険とは、豊かになる国にこそ求められる(市場が伸びる)業界なのである。

 生命保険市場は、その国の経済発展と比例して伸びる。この理由を考えてみる。経済発展が起きる国では、道路や建物など社会インフラへの投資が伸びる。それは換言すれば、労災リスクの高い事業が増えるということだろう。一家の大黒柱がある日突然労災で亡くなってしまえば…。不安が不安を呼び、将来への備え・残される家族への贈り物として生命保険の契約者数が伸びるのだろう。

 日本の将来の状況を考えてみれば、①少子化②晩婚化③高齢化が特に生命保険市場に大きな影響を及ぼすように感じる。①少子化が進めば、新たに加入する層が減る。②晩婚化というのも大きな要素だ。なぜなら、扶養する家族がいなければ生命保険に入る必要はないからだ。③高齢化に伴い、老人の死亡者数が増える。すると、生命保険会社にとっては保険金支払が増える。

 

 日本の生命保険会社、特にこれまでのビジネスモデルで成功して肥大化してしまった四メガ生保(日本生命、第一生命、住友生命明治安田生命)はビジネスそのものを大きく変えなければならない。

 各社とも行っていることは似ている。①人件費など固定費の削減②海外展開③新しい保険商品の開発④若者など新たな顧客を取り込む施策などだ。サンドボックス的に子会社を作ったりして、様々な施策が試されている。

 特に面白いのが③新しい保険商品の開発という部分だ。生命保険は日本の法律上「第一保険」と分類される。ちなみに「第二保険」は損害保険だ。そして「第三保険」が生保にも損保にも分類されない保険だ。例えば介護保険医療保険というのが挙げられよう。生命保険の各会社はその開発に力を入れている。最近のブームは「健康増進型保険」で、健康診断の結果を提出すれば必ず保険料が下がったり、運動量に応じてプレゼントが貰える保険もある。

 

 以上、日本の生命保険会社を取り巻く環境と、各社の対応索について概観してきた。本稿の締めくくりとして、私が考える生命保険の青写真を説明する。

 生命保険会社の強みは、なんといっても全国津々浦々に広がる営業職員ネットワークである。各地の営業職員=生保レディが直接訪問して説明してきたからこそ、日本はかくも生命保険が普及した国になった。この強みを生かして、生命保険会社は地域における存在感をより発揮するべきである。地域社会との結びつきを深めることで、生命保険会社に対して親近感を持ってもらい、それにより保険商品を買ってもらうようにすればいい。

 そして、生命保険という商品にこだわる必要はない。全国に職員チャネルを持つ営業に強い企業として、その営業力を商品にすればいい。要は、従来の生命保険、医療保険を販売するだけではなく、銀行の商品や損保の商品、あるいは怪しい健康グッズの押し売りでもすればいい。

 また、地域社会への具体的な貢献として、介護・ヘルスケア事業や見守りサービス、買い物支援サービスなど、事業会社に積極的に投資をしよう。それは或いは、他の企業との連携によっても良い。〇〇生命保険に入って、この介護保険商品を買っていれば、死亡保険金にも、まるまる老人ホームの入居費用にもなる、という感じだ。実効的に貢献しよう。