信託銀行の有する可能性

前回は、生命保険の有する可能性について論じた。

今回は、より中心的な役割を果たすであろう信託銀行について語る。

 

「日本の家計金融資産の三分の二は、65歳以上の高齢者が有していること」

私はこのことに大きな問題意識を持っている。

 

本稿では、なぜ高齢者が持っていることが問題なのか、なぜ高齢者は持っているのか、そして最後に、どうすればその問題が解決されるかについて語ろうと思う。

 

第一に、なぜ高齢者が資産を持っていることが問題なのか、について。

高齢者は消費性向が低い。資産を持ってはいるけど、有効活用されていない。一方で、30,40歳の人々は、住宅ローンや教育費などお金が必要だし、たくさん遊びたい年頃なのに、肝心のお金がない。だから、消費が伸び悩んで日本経済が元気にならない。

 

第二に、なぜ高齢者は金融資産をホールドしてしまうのか、について。

これは、投資に対する不信感という言葉に尽きるだろう。

高齢者は、バブル崩壊など金融市場の崩壊局面を見てきた。安易に投資に手を出さないことは、彼らにとって正しい生存戦略だった。1980年代から今までの日経平均の推移を見ても、その考え方は正しかったと言えよう。

しかし、現在においては、投資はなんとでも出来るのだ。それこそ米国株に投資すれば安定的な価値増加が見込める。確かに日本株、ましてや個別株は危ないけれど、安全な方法をとろうと思えばどんな風にもできる。

 

第三に、どうすればこれら問題が解決されるか、について。

まずは、私の目標を語ることから始めよう。

高齢者の方には、お金を全く持ってもらわないようにする。金融資産すべてを金融機関に預けて頂く。そして、金融機関の管理の下、適切に使って頂く。

とりあえずは生前相続を増やす。資産需要が大きい30,40代に適切にお金が行くようにする。

理想は、全国民ひとりひとりにFPをつけることだ。彼らそれぞれに金融リテラシーを持ってもらうことで、未来を見据えた消費行動をして頂き、ひいては日本の財政再建につなげる。

 

デジタル円通貨が普及すれば、自ずとタンス預金という文化もなくなるだろう。

もしその金融機関が破綻した場合はどうするんだ?

金融機関が破綻することはない。必ず公費が注入される。また、万が一破綻しても、保証金があるではないか。各ファンドに対しての保証金で賄えばいい。

 

全国民にFPをつけたい。計画的にお金を利用してもらうことで、安心して消費してもらえる。無駄遣いすることもない。また、トレーサビリティが高まるのだから企業にとってもいい商品を提案するチャンスになる。

 

なぜ信託銀行でなければならないのか?メガバンクがやればいいではないか。あるいは、新興フィンテック企業が。こういうサービスは、やりたい人がやればいい。

では、優先順位高く対応すべき顧客層はどこか?それは高齢者である。資産もあるから、事業としての旨味もある。若年層への投資支援も重要だけど、現在の、限られた人的資源を割いてまでというほどではない。

そうなると、提供サービスとして重視すべきは安心感である。その点、信託銀行は強い。また、これまで同様のサービスを手掛けてきたというノウハウ、人的資源を有する。

ロボアドも手掛けるべきだ。逆にロボアドも銀行と協力すべきだ。銀行が関わっているというだけで、社会の安心感は高まる。

 

とにかく、家計のもっている資産を全て、運用のテーブルに置いてもらう。そこから議論は始まる。